2010年2月7日日曜日

The New York Timesから見る、トヨタのリコール問題

プリウスの大量リコールの問題に関して、アメリカのメディアは追求の勢いをどんどん増してきています。私が読んでいるのは、主に The New York Timesですが、他誌も積極的に問題を取り上げていて、当然関心が高いです。


今回のトヨタの対応に関して、このブログを書いている時点で一番新しい The New York Times の記事では、過去のトヨタのリコールや不具合の事例を全て挙げています。まるで、ほら、実はこんなに問題があったんだよ! そう言わんばかりに..

また、今回のトップの対応の遅さや、最近の自社弁護の傾向を際だたせるかのように、かつてのトヨタ、特に30年前にアメリカの市場を開拓しているころと比べて、いかに会社の姿勢が変わってきているかを詳しく述べています。また、1989年のレクサスの不具合が見つかった時は、迅速に対応し、会社がわざわざ顧客の家まで出向いて車を回収してまわったということを例としてあげています。

そんな会社が、最近は、問題が起こると、顧客の運転の仕方に問題があるなどと自己弁護をするようになったと指摘をしています。いったい何がトヨタにおこっているのでしょうか。プリウスの販売のあまりの好調に、またそのハイブリッド技術への高い評価に、奢りがいつのまにか生まれてしまったのでしょうか。

さて、文化的な違いという観点から、今回のトヨタの対応について2つ問題点を指摘したいと思います。

(1)トップの対応のスピードの遅さ
アメリカは大統領に大きな権限を与えている国です。また企業でもCEOは絶大な権力をもっていて、多くのことがトップの判断で決まり、素早く(個々に程度の差はありますが、日本の政府や一般的な日本の会社と比較すると)行動がとられます。分かりやすい例で言うと、国内で大規模な災害が起こったりすると、早いときは次の日には大統領自らが被災地を激励にいったりしますし、応援のメッセージも出すのが早いです。

これに対し、日本の政府は議員内閣制ですから、総理大臣の権限や裁量は大統領に比べるとかなり制限されます。党内や派閥内、他の政党、関係省庁などのコンセンサスや根回しが行われてから初めてトップが動くというのが普通です。これは民主党政権になってもあまり変わった感じがしません。

アメリカ人は悪者をやっつけたり、自分の命をはって人々を守るヒーローが大好きです。そんなアメリカ人からは、今日になってようやく「形ばかり」の記者会見を行ったトヨタのトップは、責任あるリーダーとはうつらなかったようです。

(2)記者会見は原稿を見ないで、アイコンタクト!
The New York Timesの記事は、ビデオが直接画面内で見られるようになっています。豊田社長の会見が、実はもうひとつの問題です。

公式に話をする時は、原稿があってもいいのですが、できれば原稿を見ないで話せるように、事前にしっかり練習をする必要があります。頻繁に原稿に目を落としたり、感情も入れず平板な調子で読んだりすると、自信がない、責任がない、何かを隠している、と見られてしまいます。豊田社長の記者会見はまさに上記の問題点そのままの会見でした。

世界的な大企業であるトヨタで、危機管理のための準備や外部のサポート(マスコミ対策も含む)がまったく機能しないということがあるのでしょうか。とっても不思議でならない今の状況です。

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